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ますべのディベートメモ

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BoPの階層

競技ディベートにおいて、その言語表現は各々の要求に従って3層に分けて考えることができる。すなわち、競技による要求、論題による要求、立論による要求の3つである。BoPという概念はこの3層を貫いている概念でありその意味で競技の基礎的な概念となりうるが、分析的に出力されたスピーチを捉えるには些か大きい。そこでBoPそれ自体を細かく分割して、それが何に由来するのかについて一般的記述を行い、実践的な思考を可能にするべく論述を進めてみよう。

(1)競技による要求
 競技の究極的な目的は、ジャッジを説得することである。すなわち、まず第一に「説得する」という語が定義づけられなければならないのであり、同時にその対象である「ジャッジ」を定義しなくてはならない。
 「説得」に関してこの競技はいささか禁欲的な態度を取る。3つの可能的立場が存在し、ディベートはその最後のものを取る。第一に抗弁を許さぬもの、第二に魂(認識・知識・判断の束としての自己をこう呼ぶことにする)の向け変えを促すもの、第三に魂の能力に関して部分的にその発揮を認めるもの。なぜなら、ディベートは真理に関して指示説ではなく、脱引用化説あるいは使用説を取るのであり、競技内で評価される(真理値1を取る)議論とは、基本的に論証それ自体であり、単に現実に生起した(するであろう)事実(仮言的事実)を指し示すことではない。いかなる正しい(正しい統計が存在するとして)数的データも、その背景の分析や理由付けなしにゆえに真とはみなされないように。
 ゆえに、ジャッジとは第一にスピーチを聞き取り脱引用化するという限定的な作業にのみ従事する者である。そして、スピーチの意味するものそれ自体を十分に把握することに努めたのち、ラウンドそれ自体を論証のせめぎ合いと捉え、論証の内部的な範囲についてのみ、限定的かつ論理的な判断が求められる。

(2)論題による要求
論題による要求は、証明しなければならないことについてのコンテクストの設定であり、次に量化である。
コンテクストとは、証明しなければならない対象の諸特徴と、その存在の時空的基盤を明らかにすることである。
量化とは、証明しなければならない対象が、全称命題(∀)によって表現されるのか、それとも特称命題(∃)によって表現されるのかをまず規定し、後者の場合多くの/少ないという区別を導入することによってさらに範囲を限定することもある。

(3)立論による要求
 論題による要求によって議論の出発地点が明らかになった。最後に決めるべきは議論の終着点である。立論の要求によって決定されるものは2つ、証明の道中の長さと険しさである。証明の長さはその終着点が出発点から遠ければ遠いほど移動するのには長い時間がかかり、すなわちスピーチ時間のより多くを消費するであろうし、下手をするとたどり着けないかもしれない。たどり着いたと思っても、肝心な分析が抜けていて実際にはスタックしているだけかもしれない。
 険しさとは議論の難易度であり、証明するのが概念的に困難な場合(出生は悪である、あるいは嘘をつくのが道徳的に悪い、といったような)がある。