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ますべのディベートメモ

ディベート関連の記事を残しました。これを見るよりyoutubeの動画や音源を見てリサーチしてください

スタンスの取り方の資料

栃木県練習会の際にStanceと比較について軽いレクチャー資料を作ったので共有します。

最近akさんがstrategyについて記事を書いていたので、それを念頭に置き高校生向けにまとめたものです。内容について質問や意見があれば https://twitter.com/megalorrountasまでご連絡ください。

練習に参加させていただいた神大附属の高校生には大きくお世話になりました。細部を端折っているので、評価軸の比較などはまた要望があれば書こうと思います。ではまた。

docs.google.com

BoPの階層

競技ディベートにおいて、その言語表現は各々の要求に従って3層に分けて考えることができる。すなわち、競技による要求、論題による要求、立論による要求の3つである。BoPという概念はこの3層を貫いている概念でありその意味で競技の基礎的な概念となりうるが、分析的に出力されたスピーチを捉えるには些か大きい。そこでBoPそれ自体を細かく分割して、それが何に由来するのかについて一般的記述を行い、実践的な思考を可能にするべく論述を進めてみよう。

(1)競技による要求
 競技の究極的な目的は、ジャッジを説得することである。すなわち、まず第一に「説得する」という語が定義づけられなければならないのであり、同時にその対象である「ジャッジ」を定義しなくてはならない。
 「説得」に関してこの競技はいささか禁欲的な態度を取る。3つの可能的立場が存在し、ディベートはその最後のものを取る。第一に抗弁を許さぬもの、第二に魂(認識・知識・判断の束としての自己をこう呼ぶことにする)の向け変えを促すもの、第三に魂の能力に関して部分的にその発揮を認めるもの。なぜなら、ディベートは真理に関して指示説ではなく、脱引用化説あるいは使用説を取るのであり、競技内で評価される(真理値1を取る)議論とは、基本的に論証それ自体であり、単に現実に生起した(するであろう)事実(仮言的事実)を指し示すことではない。いかなる正しい(正しい統計が存在するとして)数的データも、その背景の分析や理由付けなしにゆえに真とはみなされないように。
 ゆえに、ジャッジとは第一にスピーチを聞き取り脱引用化するという限定的な作業にのみ従事する者である。そして、スピーチの意味するものそれ自体を十分に把握することに努めたのち、ラウンドそれ自体を論証のせめぎ合いと捉え、論証の内部的な範囲についてのみ、限定的かつ論理的な判断が求められる。

(2)論題による要求
論題による要求は、証明しなければならないことについてのコンテクストの設定であり、次に量化である。
コンテクストとは、証明しなければならない対象の諸特徴と、その存在の時空的基盤を明らかにすることである。
量化とは、証明しなければならない対象が、全称命題(∀)によって表現されるのか、それとも特称命題(∃)によって表現されるのかをまず規定し、後者の場合多くの/少ないという区別を導入することによってさらに範囲を限定することもある。

(3)立論による要求
 論題による要求によって議論の出発地点が明らかになった。最後に決めるべきは議論の終着点である。立論の要求によって決定されるものは2つ、証明の道中の長さと険しさである。証明の長さはその終着点が出発点から遠ければ遠いほど移動するのには長い時間がかかり、すなわちスピーチ時間のより多くを消費するであろうし、下手をするとたどり着けないかもしれない。たどり着いたと思っても、肝心な分析が抜けていて実際にはスタックしているだけかもしれない。
 険しさとは議論の難易度であり、証明するのが概念的に困難な場合(出生は悪である、あるいは嘘をつくのが道徳的に悪い、といったような)がある。

Narrative系証明要素

Narrative系論題の証明要素について書きます。WSDC2019 GFのPMがストラクチャー的に綺麗なスピーチをしていたので、インド訛りが強いですが自力で分解してみるとかなり勉強になると思います。
Motion: This house regrets the glorification of soldiers as heroes.
youtu.be


ナラティブ系は最近流行りの論題形式ですがプリンシプルは存在せずプラでゴリ押すのみです。従ってケースの完成度(アーギュメントがロジックジャンプなくインパクトまで落ちているか)がキモです。アーギュメントを複数出すんじゃなくて、1つのアーギュメントで小刻みに異なるインパクトを落としていくと、反論へのリスクヘッジになるので良いと思います。
また、Regret/Oppose/Supportなどの論題形式によっても証明責任の軽重がかなり変わってくるので、別にこれはNarrative系論題にuniqueなことではありませんがきちんと動詞に気を配って論題を読んでください。

1.考えるべき事
基本的な論題と変わりないですが、アクター分析が3段階あることに注意。How they react?に関しては想像力や普段のリサーチがものを言います。
・コンテクスト
・ナラティブの含意
・カウンターナラティブ(←これが一番難しい!)
・ナラティブを使う主体(Who/How they use?)
・そのナラティブによって影響を受ける客体(How they react?)(#impact1)
・行動変容によって引き起こされるharm/benefitとその帰属する主体(#impact2)

(#impact1)メンタルハーム!/blanketsって主張とヤバいchoiceをforceされるという線がある気がする。他にも自分で考えて
(#impact2)行動変容に関して誰にどのようなハームがあるかはBoPが重めなので、予めBoPをきちんと予測すること。また、きちんとモラハイが取れるアクターを選択すること。

練習題①
上記の考えるべきことについて、Team Indiaがそれぞれどのように応答していたか聞き取ってみよう。
練習題②
このmotionについて、他のカウンターナラティブは何が可能だろうか?Team Indiaとは違うcounterfactualを考えてスピーチをしてみよう。

2.リニアなスピーチの構成
A.セットアップ
・Exclusiveなコンテクスト(ナラティブが存在する⋀そのナラティブにより行動変化が起こる)の特定または描写
・そのナラティブの含意は何か?
・自分たちのサポートするカウンターナラティブは何か?

B. SQ
1. 用いる側
①誰がそのnarrativeを用いるか
②どのように具体的に用いるか
(e.g.徴兵ポスター、家庭内の親の就職希望
2. Narrativeのターゲットはそれを受けて
①どのように心に変化があるか
(e.g.メンタルハーム!!!
②どのように具体的行動に変化があるか
3. インパク
ターゲットの行動変化の結果、誰にどのようなハーム/ベネフィットがあるか

C. AP
カウンターナラティブは何か?
これが一番難しい。カウンターナラティブを特定したらSQと同様に詰める。
1.narrativeのターゲットはそれを受けて
①どのように心に変化があるか
(e.g. Blanket!
②どのように具体的行動に変化があるか
2.インパク
ターゲットの行動変化の結果、誰にどのようなハーム/ベネフィットがあるか

D.コンパリ
・OppのLikelihoodを下げる(Narrativeは事実として存在するものが論題化されるので、否定は極めて難しい)
・なぜそのハーム/ベネフィットは予想されるOppのハーム/ベネフィットより重大/大切か?

以下の類題について考えてみよう
①THR the glorification of essential service workers.(APAD 2020 R1)
②TH opposes sympathizing and humanizing portrayals of Nazi soldiers.

ディベート高大接続~大会参加編~

最近大学英語ディベート某1回生大会の運営に大会参加者がゲロ少なくて高校生呼びたいんだけど.....と相談されたので自分の高校ディベート経験とか凌霜を踏まえていろいろ書きます。個人的な経験を基にしているので、こういう場合があるという程度にとどめて過度に一般化したりしないでください。ここで想定している高校生とは、渋々筑駒聖光とかちゃんと指導者がいたり普段から大学ディベートとの交流が盛んだったりする学校ではなく、宇高とか神大附属とか藤島とか地方のHEnDAもパーラもやっててディベートは盛んだけど大学生大会にはアクセスしづらそうな学校です。あと高校生を受け入れる場合を前提しているので、お断りするかどうかは別で議論してください。

書いてる人のバックグラウンド
高校:準備型とパーラをそれぞれ1年ずつやった(HEnDA, HPDU)
大学:パーラを1年半ぐらい(ディベーター・ジャッジ・コミ(CD)・DCA・EOはやったことがある)

概論:高校ディベートと大学ディベートの違い

シーズン

 高校ディベートはうちの県の場合7-12月はHEnDA、1-6月がパーラという棲み分けでした。7-12月、特に県大会・全国大会前の10-12月とかにパーラの大学生大会に参加するのは部活としてそこまで労力を割けないし辛そう。また、パーラもHPDU, PDA, WSDC, 最近はBPも......とかなりフォーマットに統一性がなく、競技者側としてもやりにくいのではないのかなという印象です。
 大学ディベートの秋T~JBPまでのBP最盛期を準備型やってる高校生はエビ探しに溶かします。なので、梅子・紅葉と言った学年大会には大学生側が規制線引いてるのも相まってなかなか参加しづらそう。なので、高校生が参加できる大会は2月以降に開かれる割と絞られて、一般高校生に推奨できる大会はレベル的にアジ橋(Asian)、KK(BP)、エリザべ(NA)、若葉(NA)あたりに絞られてくるのかな。それにしても地方勢がキツスギ……オンライン化は地方高校生にとってもありがたいのかもしれん……

運営側の高校生受け容れ

アクセスは先輩の伝手とTwitterで告知以外あまり思い浮かばないので省略。事務的な話メインで。

コミとして

①参加
高校生の参加形態は把握してる限り2種類です。個人として参加する場合と、学校として顧問を通して参加する場合。前者は大学生と同じなので後者を主に扱います。学校は役所ですので、大会参加のためには書類を作成しなければならず、タイムテーブルや参加費と言ったアプリケで配信される情報が必要です。なので、参加したいという意志表明があった場合、以下の事をしてあげると先方にとってもありがたいかなと思います。

・なるべく早くタイムテーブルを決定する
・学校によっては部活の門限があるので、その有無を事前に確認しておく
・高校生の参加費をなるべく早く決定する
・書類のたたき台となるような公的な雰囲気の文書を送付してあげる
②申し込み後
・事前に大会用語・流れなどを説明してあげると親切
・高校の顧問はFacebookページ見てない場合があるので、見ろって言う。アプリケや直前連絡をメールで転送

③大会当日
・なるべくタイムテーブル通りに運営を進める
・ジャッジエバリュエーション概念がないので、割とパネルにもFeedback送信してたりする。Tabはそれを弾く。

時間が押していたので、凌霜はR3もサイレントにしました。

ACとして

①参加
特にBPで高校生を呼ぶ場合、馴染みのないフォーマットになるので以下の事はした方がよい。
・参加生徒のレベル感の確認、場合によっては参加可否のリコメンド
・必要によっては練習機会の提供、レクチャーの開催、資料の提供。
・大多数の高校生にEquity概念ないので、教育する
・ジャッジエバリュエーション概念がないので、教える。
・提供ジャッジを出せるか確認。無理なら代わりに確保する。(これが一番キツイ)

まとめ

急に高校生を大会に誘うと運営も煩雑になったり、高校生もただ理不尽に負けて訳が分からないという誰も得をしない現象が発生するので、レクチャーをするとか一緒にディベートするとかは絶対した方がいいです。というかOBOGがいるのなら、普段からちょっと練習に顔出してあげるのが一番いいと思います(自戒)。自分も高校生の時やべー先輩が県大会とかに来てくれて、そのひとたちが書いたUTDSブログとかKDSブログとか読んでた人間なので、まあ背中を見せてあげるというのも……(自戒)

質問相談あればhttps://twitter.com/_kircher までどうぞ

Argument理解について資料を作ってみた

とりあえず自分のディベート理解をつらつらと書いた文書を作ったのですが、誰か読んで誤りや解釈の違いについて指摘してくれると嬉しいです。最終的に洗練させてどこかに上げようと思う。

ディベートにおける基礎証明論.docx - Google ドライブ

資料供養

1回生向けディベート資料を作ろうとしたらよく分からない中途半端なゴミができたので供養しておく。

解説書書くの性格的に無理だわ。もうちょっと論理学とかきちんと勉強して、学問的知見を反映したハイエンドな文章を論文の体裁整えて上げたいわね......

なぜ編集を中断して上げたかというと、田村先輩の資料などで詳しく触れられていなかった論証の形式としての帰納法演繹法・因果論的説明を詳しく書きたかったのですが、今まで通りのSQ/AP/IMPの説明方式だと帰納法の証明において本来セットであるはずの帰納的事実の羅列とLikelihoodの話が分かたれてしまうんですよね。あと因果的説明と帰納法のハイブリッドを説明するにしても、根本的な箇所から場合分けをしなければならないことが予想されるため、それなら全部破棄して構文論的立場から書き直した方がいいじゃないと思ったわけです。幸いまだ6000字しか書いてないし。

まだディベートにおける背理法の適用とか、論証形式を拡張するような思考実験もできていないし論理学の勉強も途中なので、証明メインで何か書こうとするとなるとだいぶ先になるのかな。来年「集合と位相」取ろうと思っててそれも役立ちそうだし。まあちょいちょい書いてアップデートしていきます。

今回のは基本的に自分のディベート理解を試すために書いたのですが、既存のものと比較して優れていると思われる点は、Likelihoodの概念的基礎づけと、counterfactualの反論への拡張です。だれか書いてる人が先にいたらごめんなさい。


https://drive.google.com/file/d/1IR5ec0RjN9CgxFX9fO12G21tNDgi_Iic/view?usp=sharing

追記:スマホで見ようとすると脚注が表示されないのでPCを推奨します。あと環境依存文字が文字化けしていてすみません。基本的にナンバリングの箇所ですね。

グローバルな最強装備「便所サンダル」

多くの人が便所サンダル(ベンサン)に対して抱くイメージというのは、大方「汚い」「臭い」「不潔」「ダサい」のようなネガティブなものばかりだろう。

しかし、私は一ベンサン利用者として、このイメージに異を唱えたい。ベンサンが汚いのではない。汚いのは便所と、便所が汚いからベンサンも汚いという誤謬に満ちた推論を行う人間の心だ。実際、ベンサンは世界の最先端をゆく超絶イカした履物なのだ。イキって下駄履く大学生、無思考にクロックスを履くそこの君、ホームセンターでよくわからないプライベートブランドのサンダルを買う人間、壊れ次第すぐにやめてベンサンを履け。ベンサンを履く人間は違いが分かる人間だ。

ベンサンの機能性
ベンサンは「トイレで滑ってコケることを防ぐ」ことに全力を懸ける履物である。ゆえに、雨の日に滑りやすい場所で履いてもグリップのきいたゴムのおかげで無様に転倒することがない。その転倒防止能力は、生物系の研究者が東南アジアの河川をベンサンで踏破するという逸話からも例証される。川底のツルツルした石の上でも踏ん張りを利かせることのできる履物、それがベンサンなのだ。


ベンサンの耐久性
ベンサンは厚いゴムでできている。柔軟性に富み、衝撃吸収力に優れる。従って、少々乱暴に扱っても千切れたり、靴底が抜けたりすることはあり得ない。鼻緒がすぐに千切れる下駄やビーサンといった軟弱な履物とは比べるまでもない。もちろんゴム製なので濡れても平気だ。私は今年の長い梅雨で靴を1足腐らせ、下駄を1足カビさせたが、ベンサンは腐ることもカビることもなかった。

ベンサンの先進性
ベンサンは生物系の研究者のシンボルのような履物らしい。彼らは飛行機に乗るのにもベンサンだし、河川の生物調査もベンサンで行う。東南アジアの川を踏破するベンサン、グローバルな履物である。

ベンサンのデザイン
あまり知られていないが、ベンサン界にも有名ブランドがある。以下に書いておくからぜひ購入の指針としてほしい。

ニシベケミカル「ダンヒル
www.amazon.co.jp
私のベンサン師匠が愛用していたダンヒル。師匠は靴底がすり減って半分ぐらいになるまで使い込んでいた。なおその人も生物系である。

「パール」
www.amazon.co.jp
私の愛用のベンサンである。履いて鴨川を横断できることは実証済み。

みんなもベンサンを履こうな。ベンサン最強!